【令和2年度事例報告】三田市沢谷 ナツツバキ群落GPS調査

北摂里山魅力づくり応援事業

NPO法人SUN座

さわだに里山楽農倶楽部

事業名「沢谷の里地・里山公園づくり」

趣旨・目的  里山が荒廃した最大の原因は山資源の利用価値が低下したことだと思います。
昭和40年代までは周辺の農家や民家が暖房用または炊飯用の燃料として、
あるいは農業用の資材として里山の下枝、間伐材、竹材などを利用しておりました。そのために頻繁に人が山に立ち入り、その結果として立派な里山が長年にわたって維持されていたのだと思います。
私たちはかつてのように里山の産材(柴、間伐材、竹など)を農業に利用することによって、沢谷の里山を蘇らせることができると思ってます。
里山整備には何年もの時間がかかります。途中で息切れせずに活動を続ける
モチベーションを維持するのが、無耕作地農業と一体化した里山利用活動だと思って取り組んでいます。
 近隣の里山を清掃し、竹林を間伐し、蔓や柴を刈り取り、唯一蔓延っている常緑樹を整理します。この活動を継続的に実施することで、出来れば、集落だけでなく、近隣のニュータウンの住民にも楽しんで貰える、里地・里山公園を目指したいと考えています。

 

 

ナツツバキの調査

自生ナツツバキの全山調査の結果503本の自生を確認しました 。GPSで1本1本の位置情報を記録し、国土地理院のマップに落とし込みをおこないました。
天然記念物ナツツバキの木が503本も見つかったことは驚きであり感動的でありました。
約16万面の全山調査は相当なハードワークでしたが、私たちが活動している里山の隅々まで状況が把握できてとてもよかった。自信をもつてこれからの活動ができると思います。
 

 

事業内容  一昨年までの活動で旧尾根道400mの再整備・拡幅工事が終わりましたので、
昨年は更に南側へ150m旧尾根道を再整備・拡幅延長しました。 但し、
旧尾根道延長工事はここで打ち止めにします。理由はこれ以上南下すると
公道からの潜入者による廃棄物の不法投棄が心配だからです
昨年は更に、尾根道と西側溜池をつなぐ旧山道の再整備・拡幅を実施しました。距離300m高低差20mの旧山道を復活・整備し、眺めの良い広場も整備出来ました。 当然のことながら過去9年間にわたって整備したエリアの保全。
 
2-2 事業内容(希少種の保全に資する活動を行う場合は記載して下さい。)
ササユリ、ナツツバキの保護の為の整備活動
 
3 年間整備目標(保全活動での整備面積や本数などの数値目標を記載下さい)
 今年度は前年度の反対側、尾根道から東側溜池をつなぐ放置された旧山道を
復活します。約150m(幅2m)になると考えます。
 
加えて、この旧山道と尾根道とに囲まれたエリアで見付けたナツツバキの
群落の整備を行いたいと考えます。昨年秋の服部先生の勉強会で思いがけなく発見頂いた三田市天然記念物ナツツバキを、今年2月実施の環境カウンセラー中西収さんの現地調査で、東西両斜面に少なくとも40本以上の群落があり、かつ幼木から胸高直径17cmのものまで育っていると確認頂けました。
有馬富士に続く確認です。これを私達の「里地・里山公園づくり」の肝に
育て上げたいと計画しています。
 

 

① 過去9年間整備を続けて来たエリアを継続整
備し、維持・保守作業を実施します。
間伐したソヨゴ・アラカシ・ヒサカキの切り株
からの孫生え(ひこばえ)処理、が必要です。
また竹、ネザサ、蔓草も同様です。
② 昨年までに終了した尾根道の本格的な整備と西側山道の回復に加えて、今年度は東側登山道(山道)の回復と同時に東側斜面のナツツバキの群落の養生を、安全第一でゆっくりとしかし着実に作業を進めます。
③ ヤマザクラ・ツツジなどの成長を助け、在来種
の野花の生育環境を整えます。
④ 伐採・除去した植物性ゴミは、出来る限り焼却または堆肥化して肥料化します。

過去9年、取り組んで来ました整備の効果は的面に現われて来ています。 今年も、日当たりの確保された林地を中心に、コバノミツバツツジのピンクが見事でした。 以前整備した東側斜面は、竹・ネザサ・つる、またソヨゴ中心の広葉常緑樹の株立ちなど整備したところ、ヤマザクラ、ウワミズザクラ、モチツツジ、ウリカエデなどが復活の兆しが見えて来ています。 復活したササユリは 初夏に可憐な花を咲かせ、遣り甲斐の実感出来る里山整備作業になりました。
 

 

私たちの活動の最大の特徴は、里山整備活動で排出する山のゴミ(竹・笹・下草・伐採した常緑樹の枝など)を、極力畑に持ち込んで肥料や農業資材として利用していることです。 言い方を変えると、私たちの農地は里山の廃棄物処理設備という一面も持っています。 健全な農地の存在によって、里山全体が常に美しく整理された状態に維持できるのだと思います。里山と里地の一体整備・一体管理こそが真の里山復活なのだと思います。
私たちのボランティア・サークルの活動は、元々沢谷地区の“無耕作地”の
再活性化が目的でした。 今も続く兵庫村ニュータウン街路樹の落ち葉の堆肥化に加え、旧里山(放置林)の残材の肥料化、竹・笹の農業資材化は、本当の意味でのトータルリサイクルであり、本来の里山回帰に近いものとして、住民に喜ばれる森林整備事業と自負しております。 小型のチェーンソーを導入しましたので、かなりの大径木となってしまったソヨゴの株立ち、また松枯れにやられた赤松の伐採・整理が可能になりました。 

私たちが有機無農薬の野菜栽培を行っている沢谷地区は、ぎりぎり耕作放棄田畑の
発生から逃れている集落です。 しかしその後背地である旧里山放置林は、おそらく既に30~50年は手付かずであったようです。 ソヨゴ・ヒサカキの株立ち、竹・ネザサ類、つる植物の繁茂・浸食などで昼なお暗く、松枯れ倒木などで登山道にも
入り込めない状態でした。 一昨年の台風被害は、この状況を一層酷くしました。
一方で、近接するニュータウン(学園地区)では、成長期に入った街路樹の落ち葉を
燃えるゴミとして拠出しているという状況でしたが、私たちのサークルから配布する
収納袋を使って収集し、今年もこれを堆肥として畑地に鋤き込んでいます。

 

 

戦後暫くまで里山として利用されて来たであろう沢谷集落の裏山を、夏緑高木の林に戻す兵庫方式の里山管理を実施し、季節ごとに訪れ、楽しめる里山再生を目指します。 着手前は、倒木などで通り抜け出来ぬ程であった山道も、早くも春のつつじ群落、ヤマザクラの開花、コナラの萌黄色の芽生え、秋の紅(黄)葉が楽しめる穏やかな林間道として再生されつつあります。 集落の高齢の方たちからも、「山がきれいになった」との声が掛けられます。 これから森林整備活動の継続・維持を図ることで、照葉樹・つる・竹・笹で荒れ放題の
放置林を、楽しめる里地・里山公園化への再生を図って行きたいと考えます。
近い将来、地域の在来種のヤマザクラの植林・再生など実施し、折角残された里山
の自然を近隣のニュータウン住民にも開放し、地域コミュニティーの活性化にも役立てることが実現出来ればよいと考えております。
里山維持管理活動を継続するために、里山の残材・廃材を周辺里地農業の材料として有効活用することが、この活動を続ける原動力となっていると思います。